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先輩から学ぶモチベーションの在り方〜ザ・マミー呪われた砂漠の女王(2017)〜

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ザ・マミー/呪われた砂漠の女王(2017)

「ミイラ再生」を原作とした
近年でいえば「ハムナプトラ」のリブート版。

ぼくは「ミイラ再生」のオリジナル版は知らないし
「ハムナプトラ」シリーズが大好きなので
そのリメイクであることを入り口に観たのだが

うーむ。

怪物映画かつ過去作品のリブート。
そして後述するシリーズ構想。

設定としてはとても魅力的なのだが
映画どうも全体的に薄味なんです。

食材としては一級品なのに
なぜそこまで淡白な味付けとなったのだろうか。

●ユニバース構想であるがゆえに●

この作品も様々な怪物達が世界線をひとつにする
シェアド・ユニバース構想
「ダークユニバース」の
第一弾となる「はずの」作品であった。

しかし公開からの興行収入もふるわず
結果としてこの世界線はザ・マミーを
第一回兼最終回としてポシャることとなる。

もちろんこの世界観が連作であり
以降控える作品への期待値を煽ることは
構成上必須項目ではあるのだが
物語の随所に以降の作品へと続く
沢山のエッセンスが詰め込んだ結果
登場人物の背景描写や
冒険のプロセスが大雑把となり
持ち尺では間に合わなかったのだろう。

とりわけエッセンスのひとつである
ジキル博士の出し方は非常に
もったいなくて思えた。

MCUではアベンジャーズを率いる
シールド長官のニック・フューリー

モンスターユニバースでは
モナークのメンバーであり
ゴジラを追う科学者芹沢博士など

シェアドユニバース系では
秘密組織とその組織を束ねるヘッド。
キーパーソンの存在がお決まりである。

この作品も例に漏れず
ダークユニバースの世界には
怪物退治専門の秘密組織
「プロディジウム」が存在し
それを率いるのがジキル博士である。

この「ジキル博士」というのは
ある意味シリーズ要素としては
最強のカードだったのではないだろうか。

物語の序盤から登場し
遺跡の取り扱いにあれこれと指示を出し
何やら権限を持った
「謎のオジサン」であるのだが
中盤ではきちんと身分を明かし
なんだったらハイド氏も
しっかりと暴れてくださり
インポッシブルなミッションを
数々とこなしてきたトムクルーズを
完膚なきまでボッコボコにするサービスを提供してくれた。

だが正体を明かすタイミングではなかった。

腕に注射を打つ様の匂わせ感はすごくよい。
だったらもうそのまま突っ走って
最後のエンドロール後まで
名前を明かさないでよかったのに。

秘密組織やキーパーソン
ちょい見せの伏線は後の種まきなのだが
ちょい見せどころか
きちんとテーブルに並べて
「どうぞ!」と差し出したので
お腹いっぱいどころか
もう甘いものは要りません状態。

親切心に溢れた誰も置き去りにさせない
英国紳士のスタンスが仇となったのではないだろうか

もちろんジキル博士だけのせいではないし
「もったいなかった」とか言いながらも
ジキル博士登場シーンは最高にアガった。

もし続きが有るのなら
どうせハイド氏が暴走して
他の怪物達が力を合わせて
捕獲に向かうくだりはお約束だし
ハルクバスターならぬ
ハイドバスターとか出てきて
ヨハネスブルグで大乱闘してくれたら
それはもう超胸アツ展開だったのに。

そう言う意味でショーンコネリー主演
「リーグオブレジェンド」のハイド氏の
暴れっぷりはとてもよかった。

ただ結果としてダークユニバース構想は立ち消え
闇の世界に葬られてしまったことは
なんとも皮肉なことだ。

●イムホテップ様と比べてしまう。●

本作のヒールであり
ヴィランであるアマネット女王。

前作はとは打って変わって
女ミイラがこの世界を滅ぼそうとしているようだ。

前シリーズから差別化するのであれば
二重丸な敵役である。

ただぼくはハムナプトラが大好きで
そもそものイムホテップ様贔屓であることは
許してほしいのだが
それでも彼と彼女のあいだには
なぜここまでの差がついてしまったのだろうか。

本作の基盤となる過去パートの
舞台は古代エジプト。

次期王様第一候補の王女闘う女性アマネットは
政治家としてかなりストイック。

この先王位継承まったなし状態だったが
まさかの国王の男の子誕生により
継承権は二番手に落ちる。

絶許状態でヤケになったアマネットは
権力欲しさからわるい神さまセトに魂を売り
圧倒的な闇の力を手に入れ
国王とその後継者である赤さんを殺害する。

だがアマネットは国盗りだけでは飽き足りず
主であるセト神の復活の儀式を試みるも捕らえられ
この世に恨みを遺し生きながらにしてミイラにされてしまうのだ。

時は流れた現代。
長い眠りから封印は解かれ
たまたまその場に居合わせた
トムクルーズを生贄として
セト神の復活にもうワンチャン狙いにいくのだ。

対して前作のイムホテップ様はどうだろう。

イムホテップ様が生前求めたのは
権力でも財力でもない。
最愛の女性アナクスナムンとの禁断の恋。

いち神官であるイムホテップ様と
王様の愛人アナクスナムンとでは
その立場の違いがゆえに
愛し合うことは許されないのだ。

秘密の恋がバレたイムホテップ様は
残忍な拷問の末アマネット同様
生きながらにしてミイラにされてしまう。

「くやしいのう。くやしいのう。」

ギギギと言わんばかりに
イムホテップ様の愛憎の混じった思いは
時を超え現代に蘇ります。

蘇ったイムホテップ様は
街中をあの手この手で暴れまわるのだが
真のミッションは破壊や征服なのではない。

愛しのアナクスナムンの復活である。

もうおわかりであろう。

権力を求めたアマネットに対して
イムホテップ様は純愛を求めた。

つまり暴れまわる動機というか
そもそものモチベーションが違うのだ。

アマネットよ。

貴様の動機は実に弱い。

先輩に見習って
もう2000年ばかり眠って
出直して来くるがよい。

ただしトムクルーズだけを追い続けた
その一途なスタンスと
圧倒的な向上心の強さには脱帽する。

決してアマネットが
モチベーションの低い劣等生なのではなく
ただただイムホテップ様が
秀でているだけのことであり
イムホテップ様の偉大さと尊さは
何年経とうと健在なのである

余談だが本作では
ハムナプトラで登場する
黄金のアメン・ラーの書が登場する。
きっと製作陣のサービスだろう。

前作のオマージュであり
なんともファン心をくすぐられるのだが

だったらアメン・ラーの書を使って
アマネットは倒せなかったのだろうか。

逆に水銀使ったら
イムホテップ様を封印することは
できたんじゃないのとか

そんなことを考える。

がんばれプロディジウム。

●ミイラものならではの冒険が見たい。●

ミイラとか古代遺跡系の
冒険アクションに必要なのは
なんだろうか。

ミイラのドッキリ演出してかな。

いやいや遺跡にしかけられた
数々のギミックなのかな。

ぼくなりの正解は
この「すべて」だと思う。

ミイラ映画ならではの
砂埃にまみれ牛糞の臭いが漂っていそうな
エジプトの街での追いかけっこは標準装備であり
カーチェイスの破壊される果物商店はお約束なのだ。

そして下手すればハリソンフォードと
鉢合わせてしまいそうな
閉鎖的なピラミッドの内部で
迫りくる壁やトゲの生えた落とし天井。
転がり来る大きな岩に出会い
数を頼りにした雑魚ミイラとドンパチするような

「これぞ冒険モノだぜ!!」

っていうものがなければならない。

そうに違いない。

そうに違いないと僕は思っている。

ザ・マミーの現代パートの舞台は
イギリスの市街地であり
クライマックスはその地下に秘められた
十字軍の墓所の遺跡である。

暗くてカビ臭い最高にワクワクする。

ただ僕はピラミッドの中で
戦って欲しかった。

ユニバース構想であったのなら
本作ひとつのなかで
これからのシリーズの中で
そこまで詰め込みすぎる必要もなかったのでは。

シリーズ化の取りやめは
本作の評価だけでなく
きっと他の要因も絡んでいたのだろう。

それでもフランケンシュタインや透明人間
ドラキュラや半魚人など
王道モンスターたちが暴れ回る姿が観たい。

現代のスクリーンで観てみたいのだ。

闇へ消えたダークユニバース構想が
今回のアマネット同様いつか蘇って
再びぼくたちを恐怖の底へ
落としてくれるのを待つばかりだ。

【ザ・マミー/呪われた砂漠の女王 を観る!!】

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