MUNE ATSUSHI | arts & illustrations

HOW TO MAKE IT~ビンテージテクスチャの作り方~

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ムネアツシです。

今回は僕の絵の「背景」の
作り方についてのご紹介。

「背景」と言っても
作品作りのバックグラウンドとか
制作ストーリー秘話を語る方ではありません。

いわゆる「下地」のことです。

ぼくはこれまで描いてきた作品に
経年劣化によって出来た
キズ感・ヨゴレ感のあるものや
日焼けした古紙の様な背景を多様してきました。


こんなやつね。

有難いことに個展や展示会で
ぼくの絵を見てくださった沢山の人から

「この背景はどうやって描いているの?」

と聞かれることがあります。

もちろん説明させて頂くのですが

「ベニヤパネルにジェッソという
絵具みたいなやつを何度も重ねて
その後紙やすりで削ってね、、、。」と

なかなか言葉で説明するのは難しい。
一生懸命伝えるのだけど
聞いている方のリアクションを察するに
あまりピンと来ていないようだ。

ただぼくとしてはしっかりと伝えたい。

知って欲しい。

なぜならばぼくの絵を描く全体の作業量に対して
この背景・下地作りには
約7割ほど時間と労力を費やしているからです。

実際に線を引く、色を塗るなどの
「絵を描く」作業はほんの一部。
この背景作りに納得がいかなければ
イチからキャンバスを潰していき、
思い描く柄・傷・汚れ感が出せるまでは
何度も繰り返しています。

つまりぼくの作品の本体は
この下地背景の制作であり、
「こだわり」が詰まっている
研究の成果であるのです。。

なのでこの場をつかって
背景づくりの背景を解説していきたいと思います。
そしてぼくの作品を見ていただけるときには
このシリーズを読んでもらえた前と後で
少し違った楽しみを見つけてもらえたら
有り難いと思っております。

なおぼくのこの作り方は
あくまでもネットで調べたことや
他の作家の方へ教えていただいての
試行錯誤を繰り返した独学ですので
正直方法として正解なのかはわかりません。
そしてもっと効率の良い方法があれば
是非教えていただきたいです。

ではではいってみましょう。

●ざっとしたながれ●

通しの工程としては

①木の板を用意する

②ジェッソを塗る

③乾かす

④ ②と③を繰り返す

⑤削る。ひたすら削る。

という順序になります。

とにかく忍耐力と
それでは各工程に分けて見ていきましょう。

●工程①:木の板を用意する〜パネルの下準備〜●

ぼくが支持体として
使っているのがこのような
ベニヤパネルです。

画材屋さんへ行けば
キャンバス売り場と並んで
普通に売っているものです。
今回はS2号(272mm×272mm)の
小さめのサイズです。

まず下準備として支持体のベニヤパネルに
水溶性シーラーという塗料を塗っていきます。


急にアートとは無関係なさそうなツールが登場しますが
この水溶性シーラーとは
主に建築外壁などに塗装する際に使用する
塗料の吸い込みを抑えるための下地塗料です。
ホームセンターの建築塗料コーナーに置いてあります。

なぜ絵具でなくコイツを使うのかといいますと
シーラーを使わずにベニヤ板へ
直接ジェッソを塗り始めてもいいのですが
そうすると板がジェッソを吸いこんでしまい
ジェッソの塗り重ねる「層」を作るのに膨大な時間を要します。

そんな後の工程を楽にしてくれる
便利ツールなのである。

シーラーを塗ったうえでの耐用年数は
正直まだ初めて3年程度ですので
どこまで耐えうるのかはわかっていません。
詳しい方がおられましたら教えてください。

そんなわけでまず
シーラーを「塗る→乾かす→塗る」の作業を
2〜3回繰り返します。


写真では変化がわかりにくいですが
ベニヤ板の色が少し濃くなり
木目が浮き出て表面に少し光沢感が出ます。
ここまで来たら次はジェッソを塗っていきましょう。

●工程②:塗る。とにかく塗る。●

ここまで来たら次はジェッソを塗っていきましょう。

ジェッソとはアクリル絵の具などを使用する際に
絵の具の定着性や発色性を高める塗料です。


これが一層だけ塗ったものです。
まだパネルの表面に木の質感が残ってい流ので。
木目や木のパネルの質感がなくなるまでジェッソを
「塗る→乾かす→塗る」の作業を繰り返していきます。


「塗る→乾かす→塗る」を繰り返した後のものです。
4〜5回繰り返したでしょうか。
正直この工程はすごく地味であまり楽しくはない。
ただ気を抜いて適当にやってしまうと
筆や刷毛の跡が残ってしまい
完成度に関わってきます。
なので可能な限り丁寧に進めていきましょう。

さて、そんな退屈な作業も終えますと
木目も消えてジェッソのざらっとした表面へと変わります。
ここまでお疲れ様でした。
次からやっとダイナミックな筆の動きを伴う
アートっぽい作業に入っていきます。

●工程③:ランダムに色を乗せていく。●

次のステップへは
まず茶系の絵具を混ぜたジェッソを3色程用意しましょう。
完成形としては古めかしいビンテージ調な背景づくりを目指します。

シミや汚れがついたようなパターンを
先ほど作った3色のジェッソで無造作に塗っていくのですが、
塗るというよりも色を「置く」ような感覚です。

ここでも筆跡が残らない程度に凹凸を出すことで

後の「削る」工程の際にランダムな模様を作ることができます。

納得のいくまで色をのせたら
ドライヤーで表面を軽く乾かします。

表面の2割程度乾かせたら
濡れたハケで軽く撫でるように表面を馴染ませていきます。
そうすることで乾いた部分は
そのままパネル上に残り色の境目に「フチ」ができ
まだ乾ききらないジェッソは
それぞれの色と混ざり合い、
色の境界線とグラデーションの混在した模様に
更なるランダムな演出が加わります。


ここまで完全に乾かしたら
さらに薄い茶系のジェッソで
表面を塗っていきます。

この薄い茶色が下地のベースカラーになります。

当然ですがこれまでにパネルに乗せていった色は
濃ければ濃いほど、使用する色の差をつければつけるほど
ビンテージ感を表現できます。
反対になるべく薄い茶色でかつ似た色を
重ねていくと優しいマイルドな下地ができます。

Collage mark02 『もっとみんなと一緒にいたかった』
2017年

コラージュを作っていたときは
茶系だけでなくいろんな色を使って
下地づくりをしていました。
色をつけるとまた楽しいです。
気分転換にもなります。

この時は日本の伝統色を意識した
下地づくりをしていました。
参考にこちらをご覧ください。↓
日本の伝統色 和色大辞典 – Traditional Colors of Japan

見ていて楽しいサイトです。


これも2〜3回塗ったものですが
下に塗っておいたランダムの茶色が隠れて
ほぼ一色のベタ塗りくらいになったら
この工程は終了です。
次の「削る」のステップへすすみます。

●工程④:削る。気が済むまで削る。●

世の中のDIY男子よ
お待たせしました。
こちらがぼくが愛用している
makitaの電動サンダーです。


男ならやっぱりmakitaです。
ブルーが超イケてる。

以前は100均の
ハンドサンダーを使っていたのですが
キャンバスが大きくなればなるほど
腕が疲れるので非常に効率が悪い。
そして削りカスも散らばってしまうので
吸塵機能がある電動サンダーは
後片付けもとっても楽なので重宝しています。
流石、世界のmakita です。

ただこの電動サンダーの難点としては

音が大きい。

本当に大きい。

基本的にベランダで削る作業を行うのですが
集合住宅で使うには音あまりにも大きすぎる。

ぼくが隣の住民ならば
秒でクレームを入れに行くレベル。

是非ともトラブルにならないよう
近隣の方々に配慮して作業しましょう。

窓を開ければ心地よい風が
あなたを包み込むような
土曜日の午後なんて時間は一番避けましょう。
隣人トラブルはマジで厄介。


使用する紙やすりは
80番→120番→240番と
荒目から少しずつ細目へ削っていきます。
400番まで使用すると
表面がツルツルになりすぎる為
実際絵を描く時に絵具の乗りが
良くないので仕上がりと好みによって削りましょう。

あと、使う紙やすりは
空研ぎペーパーがオススメです。


ホームセンターで売っている
普通の紙やすり(一番安いヤツ)より
ちょっとだけ高い白いヤツです。

一番安いヤツでも削る分には
問題なく使えるのですが
長時間作業するうちに
ヤスリ面が目詰まりして
キャンバス面をキズつけることがたまにあります。

空研ぎペーパーであれば
ヤスリ面の「ちびり」が少なく
広い面を削る際に長持ちするので
そしてガシガシ削れる快感も得られます。

納得できるくらいの
表面になったら
削った粉を拭いて完成です。

●工程⑤:魂をぶつける。●


今回のヤツは少しやりすぎました。
もうちょっとマイルドにしようと思ったのに。

下地背景が出来上がったら
あとはあなたの魂を全力でぶつけましょう。

使用画材はいつもアクリル絵具や
漫画用のインクを使っていますが
ライブペイントのなんかの時では
油性ペンも使えるっちゃ使えるのですが
キレイな線が引きづらいのと
そもそも色があまり美しくない。
特に黒が黒じゃない。
そんなときはポスカがおすすめ。
不透明でパキッとした線が描けます。
ポスカ最強説。

●まとめ●

準備するもの:
○ベニヤパネル
○ジェッソ
○アクリル絵具
○水性シーラー(必要に応じて)
○適当なサイズのハケ。
○紙やすり(空研ぎペーパーなら◎)
※電動サンダー(男ならmakita)

気をつけること:
○各工程へ進む時はしっかりと乾かす
○ランダムを楽しむ
○騒音には気をつける

以上。

それではみなさん
楽しいアートライフを!!

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