平行線を生きる〜ブルーバレンタイン(2017)〜
北大阪の商店街の一角に
とある居酒屋がある。
店構えと内装は古き良き
大衆的な居酒屋であるのだが
たたひとつ他のお店と違うのが
その店の壁一面には
映画のポスターが張り巡らされている。
そこの大将はよっぽどの
映画フリークであることが伺える。
いつだったかそこの大将に
ララランドを観たよと話をしていたら
ブルーバレンタインも観たらいいよと勧めてくれた。
あのララランドを入り口に薦めてくれた映画だ。
ライアン・ゴズリングが出ているからだけでなく
バッドなエンドは目に見えていた。
ゴズリングが幸せになれるわけなんてない。
さあ今日もネタバレするぞ。
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ブルーバレンタイン(2017年)
たくさんの映画レビューでは
夫婦やカップルでは観ない方がいいだとか
男女感での価値観の違いが如実に現れるだとか
兎にも角にも揉め事の原因となりうる鬱系ラブストーリーに間違いない。
運命とさえ思えるような偶然の出会い。
そしてすれ違いからの別れ。
さして変わりばえのないシナリオなのだが
ただしこの映画は愛の始まりから終わりまでを
単に描いた物語ではなかった。
ララランドのクライマックスでは
すれ違ってしまったライアン・ゴズリングと
エマ・ストーンの「あったかもしれない」
幸せな未来をパノラマのように繰り広げ
鮮やかにもぼくらに喪失感を叩きつけた。
対してブルーバレンタインは
時間という一直線に進む時間軸を
ラブラブな出会いからのパートと
冷め切って壊れてしまうまでの
現在パートとを交互に展開させて
残酷なほど対照的な「いま」と「むかし」を並走させた。
幸福さの落差。
鑑賞者であるぼくらは
未来(現在)を知った上で
いま(過去)の幸せな二人に何も手出しは出来ず
ただただ終わりを待たなければならない。
ペニー・ザ・クォーターズの
「You and Me」
出会って間もない頃
初めて部屋で聴かせたときのふたり。
現在のラブホテルで流した時のふたり。
あっつあつなあの日の彼女。
ヒエッヒエな現在の彼女。
対応のギャップには
心を引き裂かれる思いがした。
エンドロールでは
幸福の絶頂だった結婚式での写真が
花火と共に走馬灯のように打ち上がる。
ここでとどめを刺すなんて。
とんでもない監督。
この物語に2人のすれ違いとなる
決定打など描かれていない。
そもそもそんなものはきっと無かったのだろう。
起承転結の転も無く
元々持っていた互いの歪みを
時間が徐々に割いていった。
ただそれだけの話であり
ぼくらの恋愛も所詮そんなもんだ。
だからこそ恋愛を経験した人なら
誰もが胸をえぐられる思いがする。
そんな現実味を帯びさせる
過去と現在を交錯させることで
見事なドラマに仕立てた
このブルーバレンタインは
愛を信じる全ての人へ向けた映画だ。
そして鑑賞者はもれなく愛に裏切られる。
縁も愛も一度交わればその後は
異なるほうへ進むのだろうか。
それならいっそ交わることなく 誰かの近くの平行線を生きれたなら。
この映画のコピーとして
ぴったりのポスターを見つけたので
参考に貼っておきますね。
ほな!
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